防錆油の基礎と使用方法について
防錆油には様々な種類があり、それぞれの目的・用途に合わせて使用されています。現場の状況を踏まえ、用途に合った油剤を選定し、適切な方法で使⽤しないと、思ったような効果が出ない場合があります。防錆油のことや弊社がご提供できるサービスをご紹介いたします!
目次
1. はじめに
(1) 鉄はなぜ錆びる?
(2) 金属製品をつくる時はどのように錆を防いでいる?
2. 防錆油とは何ですか? (1) 防錆油とは
(2) 防錆油の役割 (3) 使用方法
4. 防錆油はどのように選ぶのですか?
①防錆油の選定による錆トラブルの改善事例 ②防錆油の変更によるメッキ不良の改善事例
1.はじめに
(1)鉄はなぜ錆びる?
多くの金属は金属単体として自然界に産出することは珍しく、鉄鉱石のようにもともと錆びた状態で自然界に存在しています。そこから人間の技術で加工することによって、金属単体を取り出し、私たちの身の回りにある金属製品の材料として使用されます。
しかし、金属単体として取り出された後でも、もともと自然界にある酸素や水などに触れると本来の鉱物としての姿に戻ろうとします。これが金属に“錆び”が発生する仕組みなのです。
(2)金属製品をつくる時はどのように錆を防いでいる?
切る、削るなどの加工がなされた後の金属表面(新生面)は、特に自然界の物質と反応しやすく、 “錆び”が発生しやすい状態にあります。金属を切って、曲げて求められる形状に仕上げても、金属が“錆び”てしまうと、製品の見た目が損なわれ、強度も下がってしまうので、金属製品は“錆び”た状態では本来とは程遠い性能になってしまいます。 この“錆び”を防ぐために、金属製品をつくる工程には、防錆(さび止め)処理が含まれていることが多いです。
2.防錆油とは何ですか?
(1)防錆油とは
防錆油とは、製品を錆や腐食から保護するために、金属表面に塗布されるオイルです。
加工した製品の防錆処理だけでなく、機械部品、金型、自動車の下回りの防錆や、潤滑剤としても使用されています。
(2)防錆油の役割
〇強い吸着⼒による持続的で緻密な皮膜を形成する。 〇金属表面が水分、空気、埃と反応することを防止する。 〇酸・塩雰囲気、腐⾷ガスなどの様々な腐⾷性環境から保護する。 〇表⾯の⽔分を洗い流すことによる防錆⼒の向上する。 〇指紋の除去や付着抑制の機能で、金属表面の清浄度を維持する。
(3)使用方法
金属表面に塗布し、防錆油の種類によっては一定時間乾燥させます。塗布方法は、浸漬、スプレー・シャワー塗布、刷毛塗りなどがあります。使用する防錆油の種類や使用条件によって異なります。
3.どのような防錆油がありますか?
防錆油には、指紋除去形、溶剤希釈形、ペトロラタム形、潤滑油形、気化性のタイプがあります。
防錆油の種類と性状は、米国MIL規格ではP-1~P-21に区分されています*。日本JIS規格では、膜の性質,基油などによって、NP-0~NP-20に区分され、引火点、膜厚、除膜性、防錆・防食性能といった項目によって、細かく分類されています。一般的に、引火点が低いものほど乾燥が早く、膜厚が厚いものほど防錆期間(防錆力が持続する時間)が長いです。そのため、使用する工程や必要な防錆期間に合った防錆油を選択することが望ましいです。
防錆油(さび止め油)のMIL規格、JIS規格をさらに知りたい場合は、次のリンクをご覧ください。
4.防錆油はどのように選ぶのですか?
防錆油は各メーカーが様々な使用用途に応じて、開発・製造しています。その中から選択する際には、防錆期間はもちろんのこと、工程や現場の状況をよく把握する必要があります。生産現場で、「防錆効果がもたない…」 「使っている防錆油の臭気がきつくて困っている…」「洗浄の際に防錆油が落ちにくくて手間がかかる…」といったお困りごとはありませんでしょうか。そのようなお客様が求めるニーズをお聞きし、必要な防錆期間、塗布方法、前工程、後工程など様々な条件から、最適な防錆油の選択をお手伝いすることが私たちの仕事です。
実際に、弊社の防錆油の選定による、お困りごと改善事例をご覧ください!
①防錆油の選定による錆トラブルの改善事例
防錆期間3カ月、次工程までの中間防錆で使用。夏場になると、加工後の部品で作業者が汗をかいた手で触った箇所が錆びてしまっており、クレーム発生につながっておりました。そこで、錆が発生する原因を分析し、最適な防錆油への切り替えを提案いたしました。
②防錆油の変更によるメッキ不良の改善事例
防錆期間3カ月、出荷前の最終防錆で使用。 出荷先の表面処理業者で、部品を洗浄してからメッキ処理しているのにもかかわらず、メッキ不良が出ていましたが、ご提案の防錆油に変更していただいたことで、解決につながりました。
5.防錆油の管理はどのようにすればいいですか?
・食品に賞味期限があるのと同様に、防錆油にも使用期限があります。使用期限は油剤メーカーによって異なりますが、6カ月~1年以内を保証期間とする場合が多いです。防錆油は過剰に在庫せず、古い缶から先に使用し、開封後は使用時以外で缶のキャップを付けておくことを推奨します。
・前工程で水溶性の加工液を使用した製品を浸漬防錆した場合、防錆槽の中に水分が混入し、防錆油の錆止め性が低下することがあります。定期的に防錆槽のドレンから水を抜く、もしくは全交換を実施することを推奨します。
・管理項目として、色相、粘度、混入水分量の数値を交換の目安とすることをお奨めします。
長岡石油ではお客様が求めるニーズをお聞きし、必要な防錆期間、塗布方法、前工程、工程は中間防錆か、
最終防錆かなど様々な条件から、最適な油剤を選定いたします。