水溶性切削油の使用方法について解説
水溶性切削油とは
水溶性切削油とは、切削加工や研削加工時に用いられる潤滑剤の一種で、水と混ぜて使用することで、その特性を発揮する切削油のことでクーラントとも呼ばれます。主に金属加工における工具や加工対象の保護、加工品質の向上、冷却による熱の制御などの目的で利用されます。
水溶性切削油は清掃不足や液の管理が不十分、高温多湿環境での管理により液の腐敗や悪臭、また適切でない濃度管理によって防錆効果の不足などの様々なトラブルが発生します。
そこで本コラムでは水溶性切削油の適切な使い方について解説いたします。
(1)補給方法
水溶性切削油は希釈する手順も非常に重要になります。手順として、容器に水を溜めてから原液を投入、かき混ぜて均一にしてから実機に補充します。仮にクーラントを希釈するときに原液を先に入れてしまった場合、乳化不良が起こり使用液の分離に繋がります。
乳化不良とは水と油が適切に混ざらずに均一な乳化液が形成されない状態のことを指します。これが発生すると油の分離や凝集を起こし、切削油の性能が低下します。
(2)濃度管理
水溶性切削油は定期的に「濃度管理」を行い、使用用途に合わせた適切な濃度を維持する必要があります。水溶性切削油には推奨濃度が存在し、推奨濃度よりも高い場合は泡立ち、手荒れ、べたつきなどが発生し、逆に低い場合は加工不良、ワークや機械部品の錆、液の腐敗などのトラブルが発生しやすくなります。
濃度管理を適切に行うことで切削油の寿命を延長することが可能なため、必要不可欠な管理項目と言えます。
(3)pH管理
さらに水溶性切削油の劣化度を確かめる方法としてpH測定があります。測定器にはデジタルとアナログと両方あり、アナログの場合には試験紙に使用液を付けてpH値を判断する手順で、錆止め性を確認することができます。pH値はJIS規格で8.5以上10.5未満であるよう定められています。但し、製品ごとにpH値の推奨が定められているので、ご確認ください。クーラントの性能を確かめるためにpH測定は実施することを推奨されています。
(4)浮上油や切りくずの除去
水溶性切削油の使用時に腐敗や菌の繁殖につながる要因として、浮上油や切りくずなどがあります。
浮上油とは機械の摺動面や油圧で使用されている潤滑油、前工程で使用した加工液などを指し、クーラントと外気を遮断することで悪臭の原因となるバクテリアを繁殖させることで腐敗の原因になるため、浮上油吸着マットの使用や浮上油回収装置の設置などの対策が必要です。
また、機械加工時に発生する切りくずによって油剤成分を吸着することで工具の寿命を低下させたり、加工不良が増加する原因になります。さらにタンク内に堆積することでクーラントの滞留が発生し、バクテリアの繁殖が発生することで悪臭の原因となるため、バキュームで切りくずの吸い取り、ステッジ回収装置の使用が推奨されます。
(5)更液
更液は使用している切削油を排出し、新しい切削油に交換することで、切削油の性能を維持し、加工精度や作業環境を最適化するために必要不可欠な工程になります。
一般的に水溶性切削油は最も腐敗しやすい6~8月の前に更液することが適していると言われています。そして、具体的な更液の手順は液の抜き取りから切りくず・油分の除去、さらに濯ぎ洗浄・抜き取りを行ったうえで新液をチャージします。
この工程のポイントとして、ただタンク内の液を交換するだけではスラッジや汚れが取れずに腐敗となる物質は残ってしまうため、残油を極力を減らしながらタンク内をキレイにすることが重要になります。その際に更液添加剤を活用すると、よりキレイになります。詳しくは下記のページをご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は水溶性切削油の使用方法についてご紹介しました。Lube Laboでは、2,000点を超える商品を扱い、工業用潤滑油に関して様々な問題解決の実績がございます。
気になった方は、お気軽にお問い合わせください。